京都・奈良・大阪4日間ツアーの後の振り返り

4日間のツアーを終えた後、お客様に大変満足していただけたと伺いました。
もちろん、よかったと言っていただけるのは嬉しいことです。でも今回、改めて考えてみたくなったことがありました。
なぜ、このツアーはよかったのだろう。
訪れた場所がよかったからなのか。たくさんの場所をご案内できたからなのか。それとも、説明の内容がよかったからなのか。
4日間を振り返ってみると、私自身がしていたのは「説明すること」だけではありませんでした。お客様の話を聞き、行動を見ながら、その都度、小さな判断を重ねていました。
そして最後には、少し勇気のいる判断もしていました。
前日までのツアーの引継ぎから
事前の情報では、4人の息子さんたちが日本についてよく勉強していると聞いていました。
実際、ツアーが始まると息子さんたちはいろいろな質問をしてくれました。
知識のあるお客様から質問を受け、それに答えるのはガイドの仕事の一つです。
日本のことをこんなに聞いてくれて嬉しい。
ただ、それだけでよいのだろうか、とも感じました。息子さんたちとのやり取りには、奥様はあまり入ってこられません。
質問が次々に出ると、どうしてもそこに意識が向きます。でも、ご家族で参加されているツアーです。歴史や文化についての説明だけではなく、買い物や食べ物なども含めてツアーに参加された方のバランスを取りながら話を聞き、興味があるかどうかを表情を伺います。
誰がよく話しているかを見るのと同じくらい、誰がそこに入っていないかを見ることも大切なのだと思います。
「早く終わりたい」の、その先を見る
初日、体験ツアーを終えたところで、夕食の時間が迫っているのでツアーを早く切り上げたい、というご要望がありました。もちろん承諾しました。
ところが、その後の話を聞いていると、お客様はそこから二駅ほどの区間を歩くというのです。「ツアーを早く終えたい」という言葉だけを聞けば、疲れているのかな、と考えたかもしれません。
でも、その後に二駅分を歩くのであれば、少し違います。
このご家族は、かなりアクティブなのかもしれない。
私の中に一つ、翌日以降の判断材料が増えました。
話すことと、聞くこと
私はガイドの中でも、おそらく聞いている割合が高いほうだと思います。
これは技術というより、もともとの性格によるところも大きいです。ただ、ガイドの仕事では意識していることがあります。
レクチャーのようにこちらが説明する場面でも、できるだけ問いかけを入れ、相手から答えが出てくるようにします。
私が考える「聞く人」の役割は、一つです。
相手がいかに話しやすくなるか。
相手が話してくれると、その方が何に興味を持っているのかが少しずつ見えてきます。
それだけではありません。歩いているときの様子、疲れてきたときの反応、それでも目を向けるもの。
ツアーが進むにつれて、そうした小さな情報が少しずつ積み重なっていきます。
数日間をご一緒するツアーでは、後半になるほど、知識を伝えるだけのガイドではなくなっていくように私は感じています。「ガイド」というより、「ホスト」に近くなっていく感覚です。
私がついていけなかったモンキーパーク
翌日は、移動について少し難しい判断が必要な日でした。
予定していた場所の一つでは、大きな渋滞が予想されていました。通常なら10分ほどの距離に70分ほどかかる可能性があり、そのまま進めば、その後の行程にも大きく影響します。
そこで行程を調整し、嵐山モンキーパークと鞍馬寺、その後に伏見稲荷を目指すことにしました。
移動距離を考えると、かなり長い一日です。
ただ、モンキーパークに登ってみると、お客様はとても速い。
今度は私のほうがついていけませんでした。
長男さんが気をつかって、私の速度に合わせて歩いてくれました。
初日の「二駅歩く」という話に加えて、実際に歩く姿も見たことで、このご家族がどのくらいアクティブなのか、より具体的に分かってきました。
伏見稲荷まで行くか
最後まで迷ったのが、伏見稲荷でした。そこまで行けるかどうかは、交通状況次第です。
渋滞につかまれば、せっかく向かっても十分な時間を取れない可能性があります。
「行かない」という選択もありました。
それでも私は、たとえ20分の滞在になったとしても、千本鳥居を見ることはできる、と考えました。
伏見稲荷まで行ってみよう。
少し覚悟のいる決断でした。
結果として、現地では約50分の滞在時間を取ることができました。
そして、この日の行程も含めて、お客様には大変満足していただくことができました。
ただ、結果がよかったから、「できるだけたくさん回ったほうがいい」ということではありません。
別のお客様だったら、私は同じ判断をしなかったかもしれません。
踏み込むためには、その前に聞くことがある
今回の4日間を振り返って、「よかった」と言っていただけた理由を一つに決めることはできません。
でも、私自身のガイドについて、一つ気づいたことがあります。
私はずっと、お客様から情報を受け取っていました。
質問の内容だけではありません。誰が話しているのか。誰が会話に入っていないのか。
どのくらい歩けるのか。疲れているのか。疲れていても何には目を向けるのか。
そうしたことを、会話と行動の両方から見ていました。
ガイドは、お客様の希望に合わせる仕事です。
ただ、「合わせる」というのは、言われたことをそのまま実行することだけではないのだと思います。
お客様を見て、話を聞いて、その方たちならどこまで楽しめるのかを考える。そして、ときには一歩踏み込んで提案する。
もちろん、踏み込めば外す可能性もあります。
だからこそ必要なのは、ただ思い切ることではなく、その前にどれだけ相手を知ることができているか。
今回の伏見稲荷への判断も、初日に同じ状況があったなら、私はできなかったかもしれません。
4日間の中で聞いたこと、見たこと、小さな反応の積み重ねがあったから、最後に踏み込むことができた。
ガイドに必要なのは、説明するための知識だけではありません。
どこまで聞き、どこまで相手を見て、そして、どこで一歩踏み込むのか。
「よかった」と言っていただいたツアーを振り返りながら、そんなことを改めて考えました。

